半纏、法被の大紋(背紋)を描く技

会社(店)を背負う。会を背負う。背中に入れる大紋(背紋)には、同じ半纏(はんてん)、法被(はっぴ)に袖を通す、仲間との絆が印されます。
半纏(はんてん)、法被(はっぴ)の大紋(背紋)は会社(お店)、会(団体)などの看板になる一番大切な部分とも言えます。

半纏(はんてん)、法被(はっぴ)のオリジナル製作、オーダーメイド、サイズ直し、修理を通じ、日本の祭りを支える染物屋でありたい…
京屋染物店は、半纏(はんてん)、法被(はっぴ)の大紋(背紋)のデザインにこだわり、妥協を許しません。今回は、その拘りの一部をご紹介します。

半纏、法被を注文する時のポイント

お客様からご注文頂く時に、「現在使用されている半纏(はんてん)、法被(はっぴ)と同じデザインで作りたい」というご要望をよく頂きます。
もちろん同じデザイン、染色、縫製で仕上げることができますので、「はい。喜んで承らせて頂きます」と答えます。
きっと、日本全国どこの染物屋さんに同じ要望を伝えても、弊社と同じように「はい。喜んで承らせて頂きます」と答えて頂けると思います。

しかし「この半纏(はんてん)法被(はっぴ)と同じに作って!」という注文は危険です!期待通りの仕上がりにならない可能性があるからです。
(しっかりとした技術、知識、経験、センスを持った染物屋さんにお願いすれば、心配する必要はありませんが)

特に、100年以上の老舗料亭や旅館、何十年と続く企業や祭り団体の半纏(はんてん)法被(はっぴ)の場合は要注意です。

皆さんは半纏(はんてん)、法被(はっぴ)の大紋(背紋)をじっくりと見たことはあるでしょうか?
気になった方は、ご愛用の半纏(はんてん)法被(はっぴ)の大紋(背紋)をチェックしてみて下さい。
半纏、法被の製作を依頼する業者によって「この半纏(はんてん)法被(はっぴ)と同じに作って!」という注文がいかに危険かお伝えします。

半纏、法被の大紋が崩れる理由

さて、半纏(はんてん)法被(はっぴ)の大紋(背紋)を、じっくりとご覧頂いたでしょうか?
「何だかおかしいかも」「バランスが崩れているかも」と感じたら、それは大紋(背紋)の形が崩れてしまっている可能性があります。

なぜ、大紋(背紋)が崩れてしまったのか。
考えられる理由は2つあります。

理由その1「最初に半纏、法被を作った時に、大紋(背紋)を吟味していなかった。または、半纏、法被の知識(経験)がない業者が製作した。」

こういうことは、ほとんど無いと思いますが、経験や知識の少ない業者さんに依頼をしてしまうと格好悪い仕上がりになってしまうことがあります。
初めて半纏を作られる方は、経験豊富な半纏(はんてん)、法被(はっぴ)製造の専門店に依頼することをお勧め致します。

理由その2「半纏、法被を作り直すたびに、見本の半纏からデザインを描き写して染めていたため、徐々に形が崩れてしまった。」

何度か半纏を作り直している場合、「この半纏と同じデザインで作って。」と業者に頼んでいる可能性があります。こういったご注文の場合は、見本の半纏(はんてん)法被(はっぴ)をお借りして、その半纏(はんてん)法被(はっぴ)から大紋(背紋)や衿文字などのデザインを書き写し、染型を作ります。完成した半纏、法被は、生地の伸び縮みや染料の滲みなどによって、型紙よりも若干崩れてしまいます。その半纏、法被を何の考えもなしに書き写せば、書き写した段階で、また若干崩れます。その崩れた下書きを元に製版するのですが、型を作る段階でも何の工夫も無く製版すれば、また形が(数ミリですが)崩れます。その染型で、半纏を染めれば、生地の伸縮や染料の浸透具合で若干(数ミリ)形が変わります。

このような流れを繰り返しているうちに、バランスが崩れた大紋(背紋)になってしまうことがあるのです。

半纏、法被の大紋、背紋を吟味する

半纏、法被の大紋の形を整える熟練の技

半纏(はんてん)、法被(はっぴ)をオリジナル製作する際、皆さんは半纏(はんてん)、法被(はっぴ)の大紋(背紋)を吟味しているでしょうか?
半纏(はんてん)、法被(はっぴ)の大紋(背紋)の形、大きさ、太さ、位置などのバランスは、半纏(はんてん)、法被(はっぴ)の出来栄えに大きく影響します。
大紋(背紋)をデザインしたり、崩れた大紋(背紋)の形を整えるためには、背中に入れる時の大きさや位置、文字や図柄の形や文化背景を理解した細かな配慮など、経験と知識、センスが要求されます。

大紋(背紋)の形を見比べてみましょう

百聞は一見に如かず。
見本の半纏(法被)から大紋(背紋)を書き写した際、経験の少ないデザイナー(職人)の場合と、経験豊富なデザイナー(職人)の場合で仕上がりにどのような違いが出るかご覧頂きます。

まずは、お客様からお預かりした半纏、法被の大紋(背紋)をご覧下さい。

とても素敵で、カッコいい大紋ですね♪
お預かりした半纏の大紋

あまりよろしくないデザイン製作の例(何も考えずそのまま書き写した場合)

お客様からお預かりした半纏、法被の大紋を、あまり経験のないデザイナーが描き写すと、、、、
こうなります↓
見本の半纏からそのまま型を起こした場合

お客様のご希望通り、見本の半纏と同じ様に見えます。しかし、よく見ると筆の運びや、止め、払い、がすごくおかしなことになっていることがわかります。デザイナーの経験や知識が不足していると、筆運びなどを意識せずに描いてしまうためです。

経験豊富な職人がデザインを製作した例(お客様に許可を頂いて形を整えた場合)

京屋染物店のデザイナーは数ミリの違いにもこだわります。手描きで大紋を修正して行くと
こうなります(この後も数ミリ単位で修正を加えて行きます)↓
※ただし、若干の修正を加える場合には、必ずお客様から許可を頂いてから書き進めます。
大紋を描く
これはまだ鉛筆書きで、修正途中のものです。これをさらに書き進め形を整えると
こうなります↓
大紋の形を整える
現在の半纏、法被の大紋(背紋)の雰囲気を変えないように、バランスを整えます。本来の文字の形や筆運び、大紋(背紋)を作る際のポイントを抑えて修正をしないと、折角の晴着が台無しになってしまいます。払いの意味、止めの意味、文字の太さの意味、図柄の意味を十分に理解したデザイナー、職人でなければ、このような修正はできません。

形を意識せずに作った大紋と経験豊富な職人が製作した大紋でどちらがよろしいでしょうか?

何も考えず、書き写した大紋↓
見本の半纏からそのまま型を起こした場合
筆運びを意識して作った大紋↓
大紋の形を整える

もちろん、代々伝わってきた大紋は大切なモノです。簡単に変えられるものではありません。
だからこそ、お客様の気持ちを大切に、ご希望をおうかがいしながらご提案して行きます。
私たち職人の心掛け一つで、大切な大紋(背紋)の出来、不出来が決まります。
意識を高く持ち、お客様の大切にしている大紋(背紋)を描きあげたいと常に考えています。

半纏、法被を吟味して作る

頼む業者の違いによって「この半纏(はんてん)法被(はっぴ)と同じに作って!」という注文がいかに危険かお分かり頂けたでしょうか。
京屋染物店にご注文頂くお客様は「この半纏と同じに作って!デザインの修正は京屋さんにお任せするから」と言って頂けます。
私たちは、その信頼に応えるために、日々腕を磨いています。

 


『京屋染物店が半纏•法被にあえて背縫いを入れる3つの理由』についてはこちらから

半纏 法被 背縫い

京屋染物店が半纏•法被にあえて背縫いを入れる3つの理由


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